共同富裕って何?資本市場への影響は?

 まずはBloombergの8/23の記事を見てみましょう。
 

 「共同富裕」は文字通り、みんな一緒に裕になろうという意味です。なかなかチャレンジな目標です。今まで「効率」を優先してきた中国が「公平」に舵を切ろうとしています。言うは易く行うは難し。中国は改革開放(1978年)以降、「先に一部の人を裕にさせる。裕になった人が貧しい人を引っ張れ」という方針で進んできました。先に裕になった一部の人がますます金持ちになり、貧しい人が貧しいままになっているのは否めない現象です。去年から打たれてきた様々な政策、動きの最終の目標はやはり「共同富裕」のためだと考えていいでしょう。
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 「共同富裕」を聞くと、昔の「平均主義」を思い出す中国人が多くいると思います。政府はバカではないので、昔の失敗は犯さないでしょう。むしろ建国以来「XX大革命」以外、首尾一貫で政治、経済、外交、社会問題を1つ1つ解決してきました。俯瞰的な視点で13億人の国を治めてきました。
 私は20年前日本に来た時から本屋に並べた中国崩壊論に目を引かれました。社会主義の教育しか受けてこなかった自分がどれだけ騙されたのかを立証したいため、石平氏や黄文雄氏櫻井よしこ氏たちの崩壊論を乱読しました。結果はどれもソース不明の写真や都合のいいデータの切り抜きであらかじめ用意した結論に辻褄合わせようとしているのがわかりました。

 中国離れを叫んでいる崩壊論著者たちこそ中国離れできない存在です。本当に崩壊されたら、ターゲットがなくなり、彼らは寂しくなるでしょう。人は信じたいことを信じます。なぜここまで簡単に見破れる崩壊論が日本で大歓迎されているのを考えました。辿り着いた答えは1つだけです。中国で実際に生活をしていないからです。
 中国のトップたちは普通選挙で勝った人ではないが、それより何百倍も困難な状況から勝ち上がってきた天才ばかりです。内股膏薬のように有権者に媚びる人ではありません。中国の大復興を実現させるために、何世代もの人の努力が不可欠、そのために一気通貫の政策が必要です。
 日本のカジノ誘致政策を1つの反例で見てみましょう。林氏がカジノ誘致のために何年間も活動しました。山中氏が当選したとたん、林氏のカジノ政策をひっくり返しました。カジノ誘致の良しあしはともかく、これぐらいのことでも政策の一貫性がまったくありません。各方面のリソースが振り回され、使った税金も帰ってきません。
 中国政府のトップエリートが50年100年単位で政策の方針を作っています。今の時代も決して数十年前の状況に戻ろうとはしていないと思います。
 「共同富裕」を実現するためのポイントは中間層を増やすことです。一億総中流時代を懐かしく思う日本人は少なくないでしょう。底辺から中間層への躍進はそう簡単ではありません。今の地位は全部自分の努力だと思っている人がいますが、違うと思います。社畜もそこそこの年収と地位と財産がありますが、全部自分の努力ではないと自覚しています。多くの人が必要なのはチャンス最初の資金です。
 「共同富裕」を実現するために大企業や超金持ちの協力がないとできません。
 昨日アリババが「共同富裕政策」に応じ、1000億元(1.5兆円)拠出すると発表されました。
 テンセントも5000億元(7.5兆円)拠出と発表
 上記2社を筆頭に多くのインターネット起業がこの政策に応じています。

 このニュースを見て最初に思ったのは「アリババは当面大丈夫かも」です。みかじめ料的な意味があるかもしれないですね笑。
 もう少し考えるとやはりこれが「共同富裕」を実現するための必須条件だと思いました。資本主義では資産を保有する人が自分のB/Sに対し、レバレッジをかけ、雪だるま式に増やすことができます。我々投資家がやっているのはまさにこれです。中国の底辺の方は自分の労働力と引換えに収入を得るのに頑張っています。彼らが注目しているのは紛れもなくP/Lのみです。なぜかというと彼らのB/Sはおそらくこの状態でしょう。
 ・流動資産は給料日にちょっとあった
 ・固定資産はない
 ・流動負債はあるかもしれない
 ・固定負債を得る権利もない(住宅ローンが組めない)
 ・知識という無形資産を蓄積する暇もない
 ・利益剰余金内部留保はない

 このような状況の人が外部の思いっきりの支援がないと次の世代が生まれたとしても階層が固定されてしまうでしょう。
 
 一方、大企業はどうでしょう。金はたまりにたまって、あちこち投資対象を探しています。シェアリングバイク戦争の時、勝ち抜いた一社のみ市場のシェアを独占しました。負け戦をした各社が壊れたシェアリングバイクを不法投棄されていました。公共資源を投入し、戦場の清掃をやるしかなかったです。
 このような状況は中国だけではありません。アメリカもそうですが、寄付文化があるがため、今まではバランスを整えてきていると思います。一方日本は大企業の内部留保額が毎年最高値を更新しています。日本企業は孫さんのような人以外、基本無借金経営を美徳としています。
日経より

 新たな投資をしなければ、だれかの所得にはなりません。経済がシュリンクしていきます。中国の「共同富裕」政策が大企業に矛先を向けているように見えますが、テンセントやアリババが出している数兆円は純粋の寄付でもありません。施設やファンドを作り、貧しい人を支援し、階層を上げたら、消費がさらに好循環で回されていきます。長期的に大企業にとっては決して悪いことではありません。むしろ消費のレベルアップを狙えます。

【まとめ】

 中国政府過去の政策とその結果を見た限り、「共同富裕」政策は中国の貧しい階層の底上げにきわめて貢献できるのではないかと思います。今の目標は2035年までに4億人の底上げとのことです。
 また、中間層の増大により、消費が回り、資本市場も持続的な恩恵を受けることができると考えています。
 

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