動的な「経済的な堀」


  バフェットが企業の「経済的な堀」を投資判断の重要なポイントと考えているそうです。愛読書「千年投資の公理」でも非常にわかりやすくこの概念を説明されています。ざっくり言うと下記となります。
 ①無形資産
  → ブランドや特許や政府認可
 ②顧客の乗り換えコスト
  → 切替時手間がかかるかどうか
 ③ネットワーク効果
  → 顧客が増えれば増えるほど、ネットワークの価値が高まり、顧客にとっての便益が増加
 ④コスト優位性
      → 安い製造過程、有利な場所、独自の資産、規模の大きさ
  
 米国株になれている投資家はこの概念を当然知っているし、ここら辺の企業が浮かんでくるでしょう。  
 ・VISA   :決済ネットワーク、規模、ブランド
 ・MSFT  :圧倒的なOSシェア、そこから派生されたクラウド、ソリューション
 ・AAPL  :ハード、OS、デザイン、囲い込み、キャッシュ
 ・AMAZON :AWSがほぼ世界のインフラになっている。EC、ブランド

 その通りです。
 
 私も「経済的な堀」を使うシーンは主に2つあります。
 ①「バリュー株」の発掘
 一時的な要因で、企業業績が低下した時こそ買いのチャンスと言われています。それが一時的な要因かどうかの判断が難しいです。そこで「経済的な堀」の4つのフレームワークで嵌めて、買うかを判断するようにしています。
 ②「グロース株」を継続的に買うかの時
 最高値を更新し続けてもグロース株を買い続けていくかを判断する時にも「経済的な堀」を使っています。

 使い方が正しいからかわからないですが、なぜかというと、ここ10年右肩上がりの米国株市場ではBuy&Holdをしてきた投資家は逆に損すること自体が難しいほうです。
 残念なことに、私は何となく、「経済的な堀」を「独占的地位」や「先行優位性」等の言葉に結びつけてしまうことが多かったです。

 そこで去年一冊の投資本を読みました。「経済的な堀」について新しい意見が書かれていました。紹介します。
 本のタイトルは「価値」です。Hillhouse Capitalという中国最大のPEファンドのCEO張磊が書いたものです。
 このファンドの成功案件の一部は下記です。馴染みの銘柄もあるでしょう。
 ・テンセント
 ・京東(JD)
 ・美团点评(Meituan)
 ・蔚来(NIO)
 ・Bilibili(BILI)
 ・Uber
 ・Airbnb

 彼がかつての講演で投資家に向けて「我々はみんな起業家だ、たまたま投資家という身分だけだ」という話は非常に印象に残りました。つまり投資家がその企業のことをちゃんと理解し、ビジネスの拡大に向けて手伝おうと言っていると解釈しています。もちろん、これはPEファンドの特権だし、仕事です。一般投資家はそこまでのことができません。
 だが、起業家というマインドで企業をデューデリし、株を買うというのができます。そして、見守って、企業の成長を喜びながら、ついでに利益をゲットするというのが投資の醍醐味かもしれません。

 彼が「動的な経済的な堀」を唱えています。今日の世界では「静的な堀」でずっと食っていける企業が少なくなっています。そして仮にあってもその企業がやがて淘汰されるでしょう。

 上図は「価値」からの抜粋です。「バリュー投資」というスタイルの変遷で「動的な経済的な堀」を説明されています。
 1920年代からグレアムによりバリュー投資が誕生
 1940年代ごろ、とにかく安い株を拾うのがバリュー投資スタイルでした。
 1980年代ごろから、バフェットの堀方式がずっと流行っています。
 2000年以降、「動的経済的な堀」が現れました。
 彼が思っている今後の投資スタイルは「価値創造」です。まぁこれはなかなか我々一般投資家ができないよね。。
 
 「動的な経済的な堀」について彼が上がった一例はテンセントです。

 10年前にテンセントのQQという商品もPC市場に根付き、10数億のユーザを抱えていました。SNS業界ではこれ以上の堀がなかったでしょう。しかし、テンセントがひっそり新商品を開発し、自らQQという独占的な商品をカニバらせました。結果、モバイル市場では次の成長のエンジンを手に入れました。
 
 彼が思っている「動的な堀」は企業家の絶え間なく価値創造に務めることです。
 どうするかは3つあります。
 1.企業が自身が置かれる外部環境をとことん分析し、競争になれなければなりません。そして売上が絶好調の時でも常に次の成長エンジンを開発すること、常に自身を否定できることです。
 
 2.違う次元でいろんな切り口でビジネスを俯瞰し、まったく新しいアイデアを創出できることです。
 
 3.オープン化
  独占的な地位を濫用せず、オープンなエコシステム、Win-Winな環境を作ることです。
 テンセントもECをやろうとしました。自ら物流網を無理やりやっても資金力があるため、いけなくはないです。JDは自社サプライチェーンが最大の特徴ですが、モバイル側の入口へのアクセスがネックでした。そこの2社が提携し、APIを開放して、Win-Winな関係を築き、見事にプラスサムゲームをプレイしました。

 言易行難です。レンタルビデオ屋さんが店舗拡大でバトっていた時にネットフリックスモデルを想像できたでしょうかね。喫茶店が自分のライバルがコンビニだと知っていましたかね。AMAZONが次はどの業界を制裁しますかね。
 
 「動的な堀」を見極めるのは「静的な堀」の百倍以上難しいです。というか、本当にあるのかよと思いますが、、笑
 ただ、投資家としても社畜としても常に考えていきたいと思います。
 みなさんもぜひコメントでいろいろ教えてください。

【過去分】

【お願い】

 最後までご覧になっていただき、ありがとうございます。

 最新の米国株関連の中国政策の情報独自の解読をこれからもどんどん発信していきます。

 よろしければ、下の応援クリック「ブログ村」でのフォローをお願いします。

 友人への転送も大歓迎です。

 引用する際に「中華社畜の米国株投資より」でお願いします。

コメント

応援クリックお願いします