チャイナリスクとは何か?この時こそ冷静になろう






 先週金曜日、米国上場の中国教育株が軒並み大暴落しました。
 TAL:△70%
 GOTU:△63%
 EDU:△54%
 ・・・
 ※最後にEDUに関する見解を述べる
 
 個人投資家は往々にして噂で買ったり売ったりしています。自分の目で見て、手を動かして、勉強して株を買わないと、失敗します。

 そのために、会計の知識はもちろん重要で、英語、中国語も次の10年投資家として生きていくための最低スキルと考えています。特に中国語です。
 もう一回言います。特に中国語です!
 次の10年は門戸全開の資本主義とは違う意味の市場経済で世界が動くと思います。その渦のど真ん中にあるのは中国です。中国とどう向かい合っていくかは日米政府だけでなく、個人投資家としても冷静に考えないといけません。自分の利益のためにも「中国だから・・」と感情的にならないほうがいいと思います。
 
 米国上場の中国株に関してはB/S,P/L,C/Sだけ見てはいけないというのがここ2,3年の株式市場を見れば一目瞭然です。では、他に何を見るかというと、政府の公文書も絶対忘れてはいけません。直接の原因は下記の国務院の公文書です。中国語のわかる方はぜひ最後までご覧ください。

 http://www.xinhuanet.com/politics/2021-07/24/c_1127691094.htm

 上の文書で一番言いたいのは「学生の宿題負担と学校外の塾の負担を減らせよ」ということです。「ゆとり教育?」と思われている日本の方は多いと思います。そうですね。50%当たっていると思います。実は「学生の負担を減らせ」という政府の公文書は今回が初めてではないです。今までもずーーーと言っています。しかし、今回は本気のようです。

 東アジアの国々の共通特徴は「人口が多い、競争が激しい」かと思います。

 この特徴により、決定された発展の路線はやはり「まずは量!質は後で何とかする」です。
 
 2000年WTOに入った後、中国は高速な発展を遂げました。この20年間は日本にとっては「失われたん十年」とカウントされていますが、中国にとっては世界とのつながり、人材を競争させ、高度な知識の人材を選抜し、国を発展させる黄金の20年です。「中国崩壊論」の崩壊の20年です。
 中国の政策を理解することこそ、今後の中国への投資、いや、今後10年間の世界への投資の必須スキルです。

 実は中国はずっと首尾一貫の原則を取っています。主に3つあります。これは特徴であるし、いわゆるチャイナリスクと考えています。

1.大多数の国民の利益のため

 多くの日本の方は嘘かと思うかもしれませんが、少なくとも78年以来のアウトプットを見ると私は本物だと思います。
 戦後、中国は実質1つの政党で国を治めてきました。この党は日本や米国のように与党の座を奪うため、しがみつくために結成されたわけではありません。政策上の誤謬があっても、遠回りがあっても、表向きの宣伝(プロパガンダ)があっても、中国の全体のための利益を考える党かと思います。コロコロ変わる政党が国に対して決していいことではありません。第二期安倍政権の前の首相椅子交換ゲームを見ればわかります。4年間の執政期間があっても、頭とお尻の期間をのぞいたら、実質2.5年ぐらいです。国民に何かやってあげるために、この期間は絶対足りません。ようやく法改正や基礎固めができたのに、次の選挙にまた突入しなければなりません。そのため、短期間で目に見える成果を出さないと引きずりおろされます。中国の与党はその心配がありません。「国の分裂は許さない」「共産党の執政を堅持する」等、後者は西側諸国からなかなかエゴで、理解しかねませんが、実はすべて、「持続的な発展」のためです。そして国の「持続可能な発展」こそ結果的には大多数の国民の利益になっています。米国のイデオロギーでバラバラになっている国の結末を本当に直視できれば、今の中国の快挙を否定しないでしょう。

2.市場の見えぬ手をコントロールできる範囲でできるだけ生かす

 これは一番厄介な部分です。1970年代後半の改革開放から「韬光养晦(才能を隠して、内に力を蓄える)」 をしながら、市場経済を導入し、一部の人に豊さを味わさせ、勤労意欲の火をつけました。2000年以降凄まじいスピードで世界の工場となり、国家発展の種の量を最大限まで伸ばし、外部から見ても超魅力的なマーケットを作りあげました。今度は脱炭素、半導体チップ、国民の平均的豊かさの向上等の質のフェーズに入ると思います。投資家はいつまで経っても中国を量しか重要視しない国という先入観を捨てたほうがいいですね。質の発展が今後の重心と理解した上で、中国の政策を見るべきと思います。
 今までの中国は市場経済の見えぬ手を極限まで生かしてきました。市場の活性化のため、クリエイティブな事業を創出するため、量的変化の間は極力口出しを控えています。しかし、それが度を越して大多数の国民の利益、持続可能な発展を脅かそうとする時に、素早く不健全な部分を切り落とします。そこが私が言っている「コントロールできる範囲」という意味です。「コントロールできる範囲」も実は曖昧なことでなく、すべて今までの公文書の中に潜んでいます。なかなかの読解力が求められますね。

3.聖域なしの改革力・実行力

 前述の「持続可能な発展」を脅かす脅威が現れたら、制裁の鉄拳から逃れられるセクターはありません。今回のEdtech(教育テクノロジー業界)で起きている大衝撃がまさに「ちゃんと統制しないとやばい」という状況だと国が認識されています。今の中国は東アジアのどの国よりも競争が激しい、教育熱心病がコロナのように広まり、小学生は自由の時間がほとんどないです。学校内でちゃんと教えず、学校外の塾で学ばせたり、オンライン授業の缶詰だったり、Edtech業界がありのあらゆる手を使って、不安を煽り、保護者・生徒を追い詰めています。あるEdtech企業のキャッチフレーズは下図です。私はかなり驚いていました。
「あなたがいらっしゃったら、我々はお子様をしっかり育てます」
「あなたが来なかったら、我々はお子様のライバルを育てます」

 双子解禁につれ、3児も解禁されました。しかし、この競争の中で生もうとする家庭はすくないでしょう。中国内の競争が無茶苦茶優秀な人材を輩出しています。現に私が中国に戻ってもいい職に就けられる見込みがありません。一方、幸福度が下がっているのが否めない事実です。このような教育業界はすでに度を越しています。

 上記の3点が私がチャイナリスクと言われているものをすこし具現化した特徴です。それをリスクで取るか、チャンスで取るかはお任せします。
 これをチャンスと取って、しっかり付き合える投資家こそ、今後10年の相場を制することができると思います。

 今回Edtechへのパンチは教育業界をつぶすためではないと思います。ん千万の教育関係者がいるし、教育こそが中国をここまで発展させた原動力の1つです。この10年間、資本の力が大きすぎて環境をゆがめすぎています。資本への規制は「too big to fail」を防ぐためです。健全な状態までは結構かかるかもしれませんが、「持続可能な発展」のためには欠かせないと考えています。

 蛇足ながら、最後EDUの現在価格に関する私の見解を話します。

 先週金曜日プレマーケットの時に私はこの文章を書きました。その時(△65%の時)に買った方おめでとうございます。まぁでも今の価格(2.93ドル/△54.22%)も全然悪くないと思います。




 なぜかというと、今回の政府の公文書をちゃんと読むと「K9教育(中学生まで)の負担を減らせ」ということの意味をしっかり理解しないといけません。つまり高校生以上は言及されていません。成人後の教育も含まれていません。そこまでの強制力がないからです。ここはEDUの開示文書をちゃんと読もうとするEDU投資家の方はいますか。すこし計算が必要ですが、結論から言うと、EDUのK9までの売上比率は59%です。高校生、大学生、成人等のウェイトは41%です。EDUの成長力を無視して、現状維持して、中学生以下の売上を0にしても、△65%は明らかに下がりすぎです。なので、金曜日△65%の時、私は迷いなくINしました。しばらくは上げ下げするでしょう。たとえ中学生以下のビジネスをかなりカットしても0にはならないでしょう。短期的に5ドルまでは反発しそうで、長期はやはり国の政策次第で分からないです。
 私は株主になるために株を買っています。この値段なら十分長期ホールドしたいと思います。
  皆さんもGOOD LUCK!

 私の他のブログも興味のある方はぜひゆっくりご覧ください。

7/26のプレマーケットの追記です。
 今日も一斉に暴落ですね。EDUとNIO、DIDI、BABAをこつこつ拾っていきますよww。

【その他】

最後までご覧になっていただき、ありがとうございます。
よろしければ、下の応援クリックをお願いします。

コメント

  1. いつもためになる記事をありがとうございます。

    アメリカの記事で中国教育企業を非営利化にすると見たのですがそれに関してはどのようにお考えでしょうか?

    また、RLXへの投資も考えているのですが中国での電子タバコ、規制については何か情報はございませんでしょうか。

    お忙しいとは思いますがご返信いただけると有難いです。

    返信削除
  2. Hiroさん
     いつもありがとうございます。
     あくまで個人的な意見ですが、
     1点目について
     新規参入の非営利化は確かに十分可能性としてあると思います。しかしすでに上場されている企業に対し、そこまではしないのではないかと思います。株価を紙屑まで悪い情報を流し、そして退場させる?これができるかな?LKみたいに粉飾をして、退場させられたわけでもありませんので・・
     すこし違う角度でいいます。NIOという会社があります。今日の状態を見るとかなり安くたたかれています。じゃあ今後中国Adrはすべて退場させられますか。すくなくともNIOはならないと思います。なぜかというと武漢政府が投資しています。じゃNIOが大丈夫、普通に経営している教育企業の株が強制退去の理由はどこにあるのでしょうか。中国は北朝鮮ではないですね。

     2点目について
     すみません。電子タバコ規制に関するほかの情報はありません。
     RLXはなかなかあぶないですね。私の友人もいろんな情報に踊らされて高値掴みされていますが、私は買わなかったです。何しろ中国最大のたばこ、いや世界最大のたばこ会社中国煙草総局のビジネスを奪おうとしているのが当時買わなかった最大の理由でした。

    返信削除
  3. ご返信いただきありがとうございます。
    確かに普通に経営している教育企業が上場廃止になる理由はないですね。とてつもないチャンスかもしれません。
    RLX は中国当局傘下の企業の利益を奪おうとしていると。将来性は抜群だと思ったのですがこれはこわいですね。
    規制の内容については日本語や英文の記事を読んでいてもなかなか実態がつかめないので中華社畜様のご意見はとてもためになります。貴重なご意見ありがとうございます。
    今後も中華社畜様のご記事で勉強させていただきたいと思うので次の記事も楽しみにしています

    返信削除

コメントを投稿

応援クリックお願いします