中国の政策の本質を理解せよ


 最近の中国株ADRが波瀾万丈ですね。「チャイナリスクとは何か」を書きましたが、PVがかなり良くて、もう少し深く入って、直近の動きの本質を分析してみます。そして次のチャンスがあるかを見つけていきたいと思います。

 1.効率と公平

 私は20歳頃まで中国で過ごしていました。割と成績もよかったです。中国では実学である数学、国語、英語以外、政治という科目も必須でした。中学校から大学までの政治のテキストではこの一文がかならずありました。

 「効率優先・公平も配慮」

 これは1993年の党大会で発表された「収入分配原則」です。若僧で記憶力のよかった私が政治科目では毎回満点近く取っていましたが、この言葉の意味を全然理解していませんでした。というか、「こういうの中学生に教えるなよ」と思いました。笑

 貧乏だった中国を市場経済で社会を発展させるために共産党中央部の凄まじく賢いエリートたちが考え抜いた方針ですね。それがこの8つの文字に凝縮されています。今になってようやく実体験を持っていろいろわかってきました。

2.いつの間にか効率だけに

 30年間過ぎました。「効率優先」で社会の発展を遂げた一方、中国のジニ係数が高くなる一途をたどりました。天秤の片側の「効率」には偏りすぎる状況が一目でわかります。

 効率優先の政策がいよいよボトルネックに直面しています。「効率優先しすぎた」弊害が各方面で顕著に出ています。

 ・論文の質よりは数量

 ・育人の大学より稼ぐ大学

 ・事実よりPV数を優先するメディア

 ・住ませる物件より儲かる不動産

・・・・

 市場経済が行き過ぎたせいか、日本にいる私が日本を共産主義国と錯覚したことがしばしばあります。

 インターネット業界で働きすぎた若者がセックスの気力もありません。美団(UberEatsのような企業)の配達員が正真正銘の自転車操業です。漕ぐ足を止めたら老いている両親と子供の顔が浮かび上がります。工場で旋盤を操られる若者がどんどん少なくなり、製造立国のはずなのに、キャッシュフローを生み出すために組み立て工場に甘んじてしまう企業が続出されています。

 一方、「世襲」「階級の固定化」「格差」「考えること自体をやめる若者」「無気力」「草食」等の言葉が頻繁にメディアから目に入ります。

 「効率優先」だけで突き進む場合でなくなりました。ボトルネックが迫っています。

 3.ジャンプのためにしゃがみも重要

 永遠にジャンプし続ける国はありません。次なる発展のために、

 ①テクノロジー

 ②人口

 が必要です。

 4.資源の配置転換

 「テクノロジー」と「人口」こそ発展の原動力です。この2つのテーマに既存資源(資本?)の配置転換が必要になります。ではどこから資金を引きますか。この2つのテーマに貢献できないところからではないでしょうか。

 ・不動産? 

 資金プールだけの不動産が誰のためになります?人口を増やせるか?テクノロジーに貢献できるか?「資産の世襲」だけに貢献できるでしょう。

 →ではBEKEは大丈夫かな?


 ・資本化されすぎた学習塾?

 内向きの競争で疲れた親がすきで塾に入れさせているわけではないと思う。

 →ではEDU、GCX等が大丈夫かな?


 ・資金を個人に貸して転がしていく転貸ビジネス?

 銀行がすでにやっているから、質屋のように抵当物がないと貸してもらえないだけだ。

 →ビッグデータを駆使してターゲット特定が上手のAntグループがIPO直前に爆破されたね・・

 

 上記は私が思いついた一例ですが、おそらく「テクノロジー」「人口増」にはあまり役に立たないでしょう。

 5.チャンスはあるか?

 「テクノロジー」「人口増」に貢献できるテーマを探すしかないと思います。

 「テクノロジー」というのはUberの配達員の労働時間を極めて正確に把握し、労働の剰余価値を搾取したり、親が金を持っていそうな大学生をビッグデータから正確に特定し、スマホ広告を浴びせ、高い金利でお金を貸したりしていることではないでしょう。

 デジタルスマート工場がいいかもしれませんね。また、今回やられた企業も死を待っているわけではないと思います。積極的に活路を見出していると思います。リソースの配置転換が早い企業があるかを考えましょう。例えば、EDUはK9教育を損切りするかは注目ですね。「人口増」が大テーマならEDUが保育事業に参入されますかね。成人後教育の拡大や、成人の転職ビジネス(転職時の再教育?)などをやるかなといろいろ考えられますね。

 BABAもECのみでなく、たくさんの中国企業を裏で支えているAWSのようなビジネス(直近黒字化)もあるし、私はこれも「テクノロジー」への貢献と理解しています。

 米国株投資家は中国株を投資する時に、よくこれは中国政府が海外上場企業へのいじめだと思い込んでいる方がいらっしゃいますが、今日の上海A株も見てみてくださいねww

 投資は株を頻繁に売ったり買ったりすることではありません。もっと高く遠くから見て観察しましょう。そして国の政策、国の文化をもっと理解しましょう。まあ私もそれがめんどくさいからS&Pに一番投資していますが・・・

【その他】

 最後まで御覧になっていただきありがとうございます。

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コメント

  1. はじめまして。ブログ拝見致しました。勉強になります。いま、Futu を買おうか迷っています。中国目線の意見を頂ければ幸いです。

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